宿泊事業を始めたいと考えたとき、誰しもが迷うことがあります。
「空き家を宿泊施設にしたいけど、民泊と旅館業許可のどちらで始めればいいの?」
実際にご相談者様からもいただいた質問です。
日本で合法的に宿泊事業を始めるには、大きく分けて2つの制度があります。
旅館業法に基づく旅館業許可と、住宅宿泊事業法に基づく民泊届出です。
名前は似ていますが、根拠法、手続き、営業条件はまったく異なります。
この記事では、旅館業許可申請や住宅宿泊事業届出を専門とする行政書士が、両制度の違いをわかりやすく比較し、富山県で宿泊事業を始める方がどちらを選ぶべきか判断するためのポイントを整理します。
旅館業許可とは?
旅館業法に基づく許可制度です。
ホテル、旅館、簡易宿所、下宿の4つの営業形態があり、空き家を活用する場合は簡易宿所営業に該当するケースが一般的です。
管轄は保健所で、魚津市・滑川市エリアの場合は富山県新川厚生センターが窓口です。
施設基準への適合を確認する現地検査があり、消防法令適合通知書の取得も必要となります。
最大の特徴は営業日数の制限がないこと。
365日通年で営業できるため、安定した収益を目指す事業者に適しています。
民泊届出とは?
住宅宿泊事業法に基づく届出制度です。
2018年6月15日に施行された比較的新しい制度で、住宅の空き部屋や空き家を宿泊用に提供する事業を合法化するために設けられました。
管轄は都道府県知事等で、届出が受理されれば営業を開始できます。
許可制と比べて手続きが簡素な反面、デメリットとしては年間180日以内という営業日数の制限があります。
5つの違いを比較
1:手続きの種類
旅館業許可は「許可」であり、保健所が審査し基準を満たしていると認めた場合にのみ許可が下ります。
施設の現地検査も行われます。
民泊は「届出」であり、要件を満たした書類を提出すれば原則として受理されます。
許可制と比べてハードルは低いものの、不備があれば補正を求められます。
2:営業日数
先ほども少し触れましたが、事業にとって重要な収益にとって、最も大きな違いがここです。
旅館業許可には営業日数の制限がなく、年間365日、繁忙期もオフシーズンもフル稼働が可能です。
民泊は年間180日が上限です。
4月1日正午から翌年4月1日正午までの1年間で180日を超えることはできず、自治体の条例でさらに制限が加わる場合もあります。
3:営業できる場所(用途地域)
旅館業許可は、都市計画法上の住居専用地域では原則として営業できません。
商業地域、近隣商業地域、準工業地域などが主な営業可能エリアです。
一方、民泊は住居専用地域でも営業が可能です。
住宅をそのまま活用する制度であるため、立地の自由度が高いのが特徴です。
4:設備基準の厳格さ
この点についても、初期投資に関わる部分ですのでとても重要なところです。
旅館業許可は、食品衛生法に基づく施設基準に加え、消防法に基づく消防用設備の設置、建築基準法への適合など、複数の法令をクリアする必要があります。
自動火災報知設備や誘導灯の設置、防火管理者の選任なども求められます。
民泊は、台所・浴室・トイレ・洗面設備の4つが備わっていれば基本的な設備要件を満たします。
消防設備も簡易な措置で済むケースがあり、初期投資を抑えやすい制度です。
5:管理体制
旅館業許可では、施設の管理は事業者が責任を持って行います。
民泊では、オーナーが施設に同居する「家主居住型」と、不在の「家主不在型」に分かれます。
家主不在型の場合は、住宅宿泊事業法第11条により住宅宿泊管理業者への管理委託が義務づけられます。
管理業者への委託費用も運営コストに含める必要があります。
どちらを選ぶべきか?判断のポイント
さて、それぞれの違いを簡単にご紹介して、違いについては大まかに理解することはできたのではないでしょうか?
しかし、皆様にとって重要なのは、結局どちらを選ぶのがいいのか?というところのはず。
それぞれ、どんな方が向いているのかも軽く触れますので、ご参考までに。
旅館業許可が向いているケース
通年で宿泊事業を本格的に運営したい方、ゲストハウスや簡易宿所として事業の柱にしたい方、インバウンド需要を取り込んで安定収益を目指したい方には旅館業許可が適しています。
初期投資と手続きのハードルは高いものの、営業日数の制限がないため長期的な収益性に優れます。
民泊届出が向いているケース
副業として小規模に始めたい方、まずは試験的に宿泊事業を経験してみたい方、住居専用地域にある空き家を活用したい方には民泊届出が適しています。
手続きが簡素で初期費用も抑えられるため、スモールスタートに向いています。
富山県は住居専用地域に空き家が点在しているケースも多いため、物件の用途地域によっては民泊しか選べない場合もあります。
まずは物件の所在地の用途地域を確認することが判断の第一歩です。
まとめ
旅館業許可と民泊届出は、根拠法(旅館業法と住宅宿泊事業法)、手続き(許可と届出)、営業日数(制限なしと180日)、用途地域(住居専用地域不可と可)、設備基準の厳格さがすべて異なる制度です。
「通年で本格運営」なら旅館業許可、「副業でスモールスタート」なら民泊届出が基本的な選択基準となりますが、物件の立地や状態、事業計画によって最適な選択は異なります。
迷ったら、まずは専門家にご相談ください。
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