皆さん、相続と実家のことを考えたとき、ふとこう考えたことはないでしょうか?
「親の空き家を相続放棄すれば、管理の問題からも解放されるのでは?」
このように、相続した実家が空き家になっているとき、負担を避けるために相続放棄を考える方は相談者様の中にも少なくありません。
しかし、相続放棄をしても空き家の管理責任がなくなるとは限らないのが現行法のルールです。
この記事では、2023年4月施行の民法改正を踏まえて、相続放棄後の空き家の管理義務がどうなるのかを、行政書士でFP技能士である当事務所代表がわかりやすく解説します。
そもそも相続放棄とは
そもそも、相続のことすらあまり知らないのに、それを放棄ってどういうこと?という方は多くいらっしゃいます。
相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)の財産を一切引き継がないことを家庭裁判所に申述する手続きです。
民法第915条第1項により、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に行う必要があります。
相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産(借金など)もすべて引き継がなくなります。
しかし、空き家のような不動産については「放棄すれば終わり」とはいかないケースがあるのです。
2023年改正で明確になった「保存義務」のルール
実は2023年、民法の改正がありましたので、どう変わったのかを改正前と改正後、それぞれを見てみましょう。
改正前:誰が管理するか曖昧だった
改正前の民法第940条は下記の通り定めていました。
「相続放棄をした者は、次に相続人となった者が管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって管理を継続しなければならない」
この条文では義務を負う人の範囲が曖昧で、遠方に住んでいて空き家に一度も関わっていない人にまで管理義務が及ぶ可能性がありました。
改正後:「現に占有している人」に限定された
2023年4月1日施行の改正民法では、第940条第1項が大きく見直されました。
改正後の条文は次のとおりです。
「相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第952条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。」
ポイントは3つです。
まず、義務を負う人が「放棄時に現に占有している者」に限定されました。
例えば、実家に同居していた相続人が放棄した場合はその人に保存義務がありますが、遠方に住んでいて空き家に関わっていなかった相続人は、原則として義務を負いません。
次に、義務の名称が「管理義務」から「保存義務」に変更されました。
積極的な修繕や活用まで求められるわけではなく、現状を維持・保存する義務です。
そして、「相続財産管理人」の呼称が「相続財産清算人」に変更されました。
相続人全員が放棄したらどうなる?
相続放棄は相続の順位に従って波及します。
第1順位の子が全員放棄すると第2順位の親、親も放棄すると第3順位の兄弟姉妹へと相続権が移ります。
全順位の相続人が全員放棄した場合、空き家には法律上の管理者が存在しなくなります。
このとき、利害関係人(近隣住民や債権者など)または検察官が家庭裁判所に対し、相続財産清算人の選任を申し立てることができます。
相続財産清算人は、裁判所が選任する弁護士等の専門家であり、空き家を含む相続財産の管理・清算を行います。
ただし、清算人の選任には予納金(数十万〜100万円程度)が必要で、申立人が負担しなければなりません。
つまり、全員が放棄しても、空き家が自動的に処分されるわけではなく、誰かが手続きと費用を負担しない限り、宙に浮いた状態になるのです。
放棄しても残るリスク
「現に占有」していた場合の損害賠償リスク
忘れてはいけないのが、放棄時に空き家を現に占有していた人は、保存義務を果たさなければならないということです。
保存義務を怠り、空き家の屋根瓦が飛散して隣家を損傷させるなどの事故が起きた場合、民法第717条の工作物責任により損害賠償を請求される可能性があります。
「管理不全空家」指定のリスク
やはりお金の問題は付きまといます。
相続放棄後も空き家が放置され続ければ、改正空家等対策特別措置法に基づく「管理不全空家」に指定されるリスクがあります。
管理不全空家への勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例が適用除外となり税負担が増大してしまいます。
相続放棄を決める前に考えておきたいこと
相続放棄は一度受理されると撤回できません。
空き家の管理が面倒だからという理由だけで放棄すると、他のプラスの財産まですべて手放すことになります。
放棄を検討する前に、空き家バンクへの登録による売却・賃貸の可能性や、空き家管理代行による維持管理を行いながら今後の方針を検討するという選択肢も含めて、総合的に判断することが大切です。
また、負の遺産であるという認識の空き家を、飲食店や旅館・民泊に活用することで、新たな挑戦をし、空き家をプラスの勝ちのあるものに変えることも可能です。
相続の手続きそのものは弁護士や司法書士の専門領域ですが、空き家の管理や活用に関するご相談は「空き家・地域再生専門行政書士」である当事務所の行政書士がお手伝いできます。
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