無許可で旅館業を営むとどうなる?罰則・リスクと正しい許可取得の進め方を行政書士が解説!
「空き家を使って民泊やゲストハウスを始めるぞ!」
「許可が必要なのはわかるけど、手続きが面倒そう…」
インバウンド需要の回復や地方移住の広がりを背景に、長野県白馬村や、富山県内でも宿泊事業への関心が高まっています。
しかし、旅館業法に基づく許可を取得せずに宿泊サービスを開始してしまうと、想像以上に深刻なペナルティが待っています。
本記事では、旅館業の無許可営業がもたらす法的リスクと具体的な罰則について、関連法令の条文を交えながら詳しく解説いたします。
旅館業法における「無許可営業」とは
旅館業法第3条第1項は、旅館業を営もうとする者は都道府県知事の許可を受けなければならないと定めています。
ここでいう「旅館業」とは、同法第2条第1項に規定されるとおり「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」を指します。
重要なのは、施設の名称や規模に関係なく、「宿泊料を受けて人を宿泊させる」行為を反復継続的に行えば旅館業に該当するという点です。
厚生労働省の「民泊サービスと旅館業法に関するQ&A」では、個人が自宅や空き家の一部を利用する場合であっても、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業にあたるときは旅館業法上の許可が必要であると明記されています。
つまり、「民泊のつもりだった」「少人数だから大丈夫だと思った」という認識は法的には通用しません。
無許可営業に科される罰則の内容
刑事罰:懲役6か月以下または罰金100万円以下
旅館業法第10条第1号は、第3条第1項の規定に違反して許可を受けないで旅館業を営んだ者に対し、6か月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方を併科すると規定しています。
この罰金額は平成29年(2017年)の法改正で引き上げられたものです。
改正前は上限がわずか3万円でしたが、違法民泊の横行を受けて大幅に強化されました。
「知らなかった」は免責事由にはなりません。
法人にも及ぶ両罰規定
旅館業法第13条は、法人の代表者や従業者が業務に関して無許可営業を行った場合、行為者個人に加えて法人にも罰金刑を科すと定めています。
つまり、会社として宿泊事業に関与した場合は、担当者だけでなく法人自体も処罰の対象となります。
行政による営業停止命令・立入検査
平成29年の法改正により、都道府県知事は無許可営業者に対しても報告徴収や立入検査を行う権限を有するようになりました。
さらに、公衆衛生上の重大な危害が認められる場合には、営業停止命令を発することもできます。
この命令に違反してなお営業を続けた場合は、第10条第2号により再び懲役または罰金の対象となります。
刑事罰だけじゃない!?――無許可営業の「見えないリスク」
法律上の罰則だけではなく、それに加えて、無許可営業には事業者が想定しにくいリスクが数多く潜んでいます。
宿泊者の安全が確保されない
厚生労働省は「違法民泊」について、衛生管理の不備、火災時の消防設備の欠如、犯罪や緊急事態への対応体制の不在、近隣住民とのトラブルなど、さまざまな危険性を指摘しています。
旅館業の許可を取得する過程では、消防法第17条第1項に基づく消防用設備等の設置が義務づけられ、消防法令適合通知書の交付を受ける必要があります。
宿泊施設は消防法施行令別表第一5項イの「特定防火対象物」に分類されるため、自動火災報知設備、誘導灯、消火器の設置など、一般住宅よりも厳格な防火基準が適用されます。
では、無許可で営業する事業者は、なぜ無許可で営業するのでしょうか?
それは、要件を満たしていないから。
つまり、無許可で営業する施設では、こうした安全設備が整っていないことがほとんどです。
万一火災や事故が発生した場合、宿泊者の生命に関わるだけでなく、運営者には民事上の損害賠償責任も問われ得ます。
近隣からの通報による発覚
無許可営業が発覚する最も多いきっかけは、近隣住民からの通報です。
見慣れない宿泊客の出入り、騒音、ゴミの問題などが端緒となり、保健所や警察の調査につながるケースが少なくありません。
過去には、京都市で賃貸マンション36室を無許可で民泊運営し、中国人観光客ら約3,500組を宿泊させて約1億5,000万円の売上を得ていた事業者が書類送検された事例があります。
また、東京都では保健所が10回にわたって許可取得を求めたにもかかわらず応じなかった運営者が逮捕され、罰金の略式命令を受けています。
将来の許可取得にも影響する
旅館業法第3条第2項第3号は、旅館業法違反で罰金以上の刑に処せられ、その執行を終えてから3年を経過していない者に対し、許可を与えないことができると規定しています。
無許可営業で処罰された場合、その後3年間は正規の許可が取得できなくなる可能性があるのです。
「面倒な手続きは後回しにしてとりあえず始めて、あとから許可を取ればいいや」という発想は、かえって事業の芽を摘む結果となりかねません。
令和5年改正でさらに強化された規制
令和5年(2023年)12月13日に施行された改正旅館業法は、主にカスタマーハラスメント対応と感染症対策に関する改正でしたが、旅館業全体に対する行政の監督姿勢が一段と強まっている点には留意が必要です。
厚生労働省は「令和6年度 旅館業法違反のおそれがあると自治体が把握している事案」を公表しており、全国の自治体が違法営業の実態把握と取締りを継続的に進めていることが示されています。
正しく許可を取得することが最大のリスク回避
ここまでの内容をご覧になって、罰則やリスクのことばかりで不安な気持ちになったかもしれません。
「じゃあどうすればそのリスクを避けて、旅館や民泊を始められるの?」
答えはたった一つ。
「正しく許可を取得する」
これだけです!
しかし、旅館業の許可取得は、保健所・消防署・建築指導課など複数の行政機関にまたがる手続きが必要であり、申請に必要な書類も多岐にわたり難しいのもまた事実です。
例えば、一般的に、許可申請書、建物配置図、消防法令適合通知書、各階平面図、客室内訳書などの準備が求められます。
特に消防法令への適合は、設備の設置工事も伴うため早期の着手が重要です。
宿泊施設は消防法上の特定防火対象物であり、自動火災報知設備、誘導灯、消火器具の設置に加え、防火管理者の選任や消防計画の作成も義務づけられています。
こうした手続きを専門家に依頼することで、法令への適合性を確保しながら、事業開始までのスケジュールを効率よく進めることが可能です。
まとめ
旅館業の無許可営業は、「ちょっとした民泊」や「小規模なゲストハウス」であっても、懲役・罰金という刑事罰の対象となり得る重大な法律違反です。
令和5年の法改正以降も行政の監視体制は強化される一方であり、「知らなかった」「バレなければいい」という認識で事業を始めることは、経済的にも社会的信用の面でも取り返しのつかない損失につながります。
富山県内で宿泊事業をお考えの方は、旅館業法・消防法・建築基準法の各要件を正確に理解し、正規の手続きを経て許可を取得することが、事業の安全と信頼を守る最善の方法です。
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富山県・魚津市で旅館業許可や民泊届出をお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。
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